山口地方裁判所宇部支部 昭和42年(借チ)4号 決定
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〔決定理由〕一、本件申立の要旨は、次のとおりである。
申立人は相手方から別紙目録(一)の土地(以下単に本件土地という)を賃借し、その地上に木造瓦葺二階建興業場一棟(以下単に本件建物という)外数棟の建物を所有し、映画館を経営するものであるが、本件借地権は、設定後すでに三〇数年を経過し、その間準防火地域の指定、付近の土地の利用状況の変化に伴い現在借地権を設定するにおいては、堅固な目的とすることを相当とするに至つているので、借地条件の変更を求める。
二、相手方の主張は、次のとおりである。
本件借地権の存続期間は、昭和四五年一一月五日までであり、また本件建物は、すでに朽廃寸前にあるので、相手方としては、更新拒絶の正当事由があるものと考えるから、申立人に対し、本件土地の明渡を求めた上、自己使用を考慮している。よつて本件申立の却下を求める。
三、まず、相手方の主張について考えてみると、本件について調査した結果は、次のとおりである。
(一) 本件賃貸借は、昭和三〇年一月一日付で更新され、期間の定めがないから、その存続期間は、昭和五〇年一月一日までと認められ、したがつて残存期間は約六年である。
(二) 本件建物は、申立人において、相手方の承諾ないしは本件の確定をまつて改築する計画のもとに天井、壁の修理その他の保存的行為もしていないため、一見して荒廃した印象を受けるが、柱、桁、土台等の主体的構造部分は、なお健全であり、朽廃寸前といつたような状態ではない(この点についての鑑定委員会の意見によると、本件建物の残存耐用年数は七年とされている)。なお、申立人は、本件土地にその他数棟の建物を建築所有し、そのうちすでに朽廃したと認められるものであるが、いずれも付属的建物にすぎない。
(三) 自己使用の必要性に基く正当事由の認められる蓋然性は殆んどない。
以上のような事実関係のもとでは、申立人の主張につき、審理した上、本案について理由のあるときは、借地条件変更の裁判をなすべきであり、相手方主張のように申立を不適法としてこれを却下すべきではない。
四、よつて本案について考えてみると、本件について調査した結果によれば、本件は、賃借権設定後、準防火地域の指定その他の事情の変更により、現に借地権を設定するとすれば、堅固な建物の所有を目的とするのが相当となつた場合に該当するものと認められる。
五、すすんで付随処分について考えてみると、堅固な建物の所有を目的とする借地条件の変更の裁判がなされる場合は、建物朽廃による借地権消滅の期待が失われるとともに、存続期間が伸長され、このことから生ずる当事者双方の利害を調整するため、相当額の給付を申立人たる賃借人に命ずる必要がある。
よつて当裁判所は、前項に認定した事実その他諸般の事情をしんしやくし、鑑定委員会の意見を聞いた上、付随処分の内容を次のとおり定める。
(一) 存続期間については、本裁判確定の日から四五年とする。
(二) 申立人より相手方に対してなすべき財産上の給付額を一一、一八〇、〇〇〇円とする(本件土地の3.3平方メートル当り平均更地価格を二〇〇、〇〇〇円とし、その総額一一一、八〇〇、〇〇〇円の一割を相当額と認めたものである)。
(三) 賃料額については、3.3メートル当り月額金三五〇円とする(従前の賃料額は約一〇〇円であつて、約三、五倍となるが、従前の賃料がすでに改訂期に達している上、前記のように借地条件を変更するのであるから、高額にすぎることはない。)(茅沼英一)
目録
(一) 借地権の目的土地
宇部市中央町二丁目六三番一九
宅地2,171.79平方メートル(656.9坪)の内別紙図面赤斜線部分1,847.93平方メートル(五五九坪)
(二) 借地契約の内容
(1) 申立人を賃借人とし、相手方を賃貸人とする(一)の土地賃貸借契約
(2) 普通建物所有を目的とし、存続期間の定めはない
(3) 賃料月額金五七、六四五円(3.3平方メートル当り約金一〇三円)